中央最低賃金審議会の意見の内容
厚生労働省の小委員会で全国の最低賃金の加重平均を現在の823円から848円に25円引き上げるように意見をまとめたようです。例年であれば10月頃に働いた給料から変更がありそうなのですが、喜ばしい事なのでしょうか?給料と言う言葉で貰うものとイメージされる方は読み飛ばして下さればと思います。給料とは経営者の立場で考えると支払うものであってコストになります。コストが増えると当然ですが何も対応しなければ利益が減ります。利益が減った分を補うためには売上高を増やすか、給料以外の他の経費を減らさなければなりません。823円から25円アップすると言う事は3パーセントの上昇です。3パーセントの売上高の増加は年商5000万円の会社であれば150万円となります。(消費税は除きます)売上高を150万円増やせない会社であれば、給料以外の経費を150万円程削減しなければなりません。一般には売上高の増加と経費の削減を両方対応しようと考える経営者が大多数だと思います。経費の削減については大企業なら下請け企業に伝えれば解決しますが、中小企業はどの経費を削減出来るでしょうか?自分の会社よりも弱い立場の同じく中小企業にお願いするケースが考えられると思います。相手先の中小企業は売上高が減少になります。そうすると、相手先の中小企業の利益が減少してしまう負のスパイラルになってしまうのではないでしょうか?
社会保険の問題
給料を上げると一般に社会保険料も上がります。社会保険料は多く負担した場合にその分万が一の時に保障が多ければよろしいと思いますが、必ずしもそのようになりません。健康保険の場合、保険料の負担と高額療養費の金額判定は逆進性の関係にあります。保険料の負担額が多いのに、高額療養費の金額判定も大きくなります。また、会社と従業員の総負担額はおよそ30パーセントになります。単純に計算しても会社負担は増加給料の15パーセントも増えてしまいます。最低賃金の増加割合3パーセント×15パーセントで3.45パーセントも増加してしまいます。最低賃金が上昇すると社会保険料も上がる事についてはあまり触れられていない事が現状です。
中小企業の現状
中小企業については、税理士の立場で考えますと景気はそれ程改善されていないように感じます。もちろん中小企業、個人事業主でも売上を伸ばし、利益も増加させている会社はありますが、バブル並みの景気とは言えないと思います。よって、最低賃金を引き上げると中小企業の業績は悪くなるのではないかと予想しております。
まとめ
平成29年度の最低賃金を引き上げるように厚生労働省は意見を出しました。賃金そのもので3パーセントの増加で社会保険料も加味すると3.45パーセントの増加になります。給料はコストですので、売上高を増やせない企業は経費を削減するしかありません。中小企業が経費を削減しようと考えると立場の弱い同じく中小企業への支払いを削減する方向になりがちです。そのため、最低賃金を引き上げる事は中小企業にとっては厳しい問題となりそうだと個人的な見解を持っております。