年末調整について会社に課されている源泉徴収義務と確定申告の関係について分かりやすく解説します。
結論
給与などを支払う際に税金を天引きして納税する制度は世界でも多くありますが、日本のように事細かく控除を計算する制度はないようです。
源泉徴収義務とは
給与などについては本来給与を受け取る側に納税義務が生じるのですが、受け取る側ではなく支払う側に納税義務を変更して税金を預かり納税させる制度を源泉徴収制度と言います。アメリカなど世界でも多くの国で採用されております。
源泉徴収義務がある理由
1.給与などを受け取る個人は税務知識が乏しい事が多く、給与などの支払いには社会保険料が絡む事が多く、専門的な知識を会社が持っている事が多いからとも言われております。
2.給与を受け取ると税金が発生するのですが、いつ発生するかと言いますと給与を受け取った年の翌年3月15日までに納める必要があります。源泉徴収制度が無い場合は国からみて税収が遅くなってしまいます。そのため源泉徴収制度を設ける事によって税収(歳入)を前倒しする事ができます。
3.給与を受け取る人10人が個別に例えば100円を税務署に申告、納税に行くと税収は1,000円ですが手間はかかります。会社に計算してもらいまとめて納税してもらうことにより手間、時間、コストが短縮されます。その結果会社側が減税になれば良いのですが。
4.これは私の持論ですが、年末調整によって増税や税制改正が本人の事とは異なり他人事のように国民がなってしまうのではないかと思います。年末調整は自分の事ではなく、会社の事だと税制改正に無関心になってしまう恐れがあります。
源泉徴収義務による会社の事務負担の増加
所得税で控除が受けられる所得控除と住宅ローン控除の2年目以降の内、雑損控除、医療費控除、ふるさと納税のワンストップ控除以外のふるさと納税は自身で確定申告を行う必要がありますが、逆に言うと多くの所得控除と住宅ローン控除の2年目以降を年末調整で受ける事が出来ますが、会社にとっては事務負担が増える事になります。2024年の定額減税も含めて会社にとって事務負担が税制改正の度に増えていく事になります。
確定申告予定の社長の年末調整
例えば不動産収入があり、確定申告を行う社長がいたとして年末調整を行わずに確定申告にて精算を行う事は出来るのでしょうか?法律上は年末調整を行わないいけませんが、実務上は期限に間に合わずに確定申告にて精算を行う事はあります。
まとめ
日本のように事細かく控除を受けられる年末調整は世界でもないですが、そのかわり納税者の税制に対する知識が欠乏したり、年末調整を担う会社には多大な事務作業が求められる事になります。一方、国や国民生活からすると源泉徴収制度と年末調整制度のおかげで毎月の税収(歳入)が安定し教育や福祉、毎日の生活に欠かせない公益事業を受ける事が出来ますので良い面もあるのかと思います。