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定額減税の概要

2023年度の税収が過去最高となった事により、納税者に返金する事がそもそもの出発点でした。

税収に対する割合は消費税が第一の割合で次いで所得税が第二の割合を占めました。

所得税から3万円、個人住民税から1万円を減税する内容でした。

定額減税の問題点

出発点が減税ですので名称通り減税が行われるのであれば、物価高対策や景気の底上げになったと思いますが、実態は減税という名のばらまきでした。

問題点の1つは年収制限を設けた事です。

給与収入者でおよそ2,000万円ほどあれば定額減税の対象外となっておりました。

扶養対象者がいない場合、わずか3万円の減税も受けられない制度でした。

一方、年金受給者や生活保護受給者は税金を納めていないケースが多いのにも関わらず、早く確実に受給する事ができました。

定額減税の事務負担

税理士という立場であっても、これまでの減税などと異なり、実務対応に困る事がありました。

1.明らかに年収(給与)が2,000万円を超える方もいったん月次の給与は定額減税の対象として計算する必要がありました。

2.扶養(子ども)の問題として、2024年以外は16歳未満(一般に中学生)の子どもは所得税の控除対象扶養親族には入らないのですが、定額減税では子ども一人につき3万円が減税の対象となりました。更に、子どもの扶養が2,000万円を超える納税者の方の扶養でしたら子どもの分も含めて定額減税の対象外となりました。例えば夫婦が共稼ぎで中学生以下の子どもが3人いる場合、夫の年収が2,000万円を超えて妻は1,000万円とします。一般に扶養は年収の高い方の扶養に入る事が多いです。夫の扶養に子ども3人が入っていると所得税だけ見ても本来4人×3万円=12万円が減税されるはずですが、年収の制限に引っかかって子どもの分も含めて12万円全額が減税の対象外となりました。解決策として2024年5月に扶養控除等申告書を変更して子どもの扶養を夫から妻に移して所得税の定額減税を受けると共に、個人住民税は前年分の扶養の訂正を行う事により一部の減税を受ける事ができました。

3.配偶者控除や配偶者特別控除を受ける夫婦間の場合、もっと複雑でいわゆる103万円の壁の見積もり額で103万円以下の妻は本人から減税するのではなく、夫側の給与から減税する制度でした。最終的に年収が確定するのは年末調整まで待たなければならず、3万円の減税(調整給付金)を受ける時期は2025年5月頃になりそうです。

4.2022年頃マイナンバーカードの普及のために一人あたり2万ポイントを配布して多くの国民が取得しております(約8割)。面倒な会社側の事務負担、税務署、市区役所などの手間を考えると所得制限を設けずに公金受領口座に振り込めば時間の短縮と受け取った国民の感情はもっと良かったのではないかと思います。

それにしてもいわゆる住民税非課税世帯への手厚いばらまきは何回目でしょうか。

定率減税の記憶

1999年から2006年まで定率減税という制度が設けられました。2024年の定額減税と違い税金を納める方の税額の20%から10%相当額を減税して景気の底支えの側面がありました。税金を納めない方や生活保護受給者には恩恵がなく、定率減税の上限は多い時で25万円もありました。年末調整で多くの方の減税が完結し、減税額も多いので景気に対する影響は2024年の定額減税よりも多かったのではないかと思います。

まとめ

2024年の定額減税は一回限りとの事ですが、新聞ニュースなどを見る限り2024年度の国税の税収もバブル期を超えて過去最高を見込むとの事です。加えて2025年には参議院選挙が予定されております。何らかの形で減税という名のばらまきが行われるのではないかと考えて備忘録として記載いたしました。

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