本日10月14日は衆議院選挙の最中ですが、多くの政党から内部留保に対する課税をした方が良いのではないかと意見が出ております。税理士の立場から分かりやすく解説します。
内部留保とは何か
内部留保とは、色々な考え方がありますが、一つの考え方として会社の利益の蓄えと言えます。
この利益の蓄えは法人税などを支払った後の金額になります。
内部留保とは会社の決算書の内、貸借対照表の右側の部分に着目した考え方です。
この金額が多ければ多いほど順調に稼いでいるとも言う事が出来ます。
全ての入金、支払いが現金で行われており、大きな設備投資が無い場合には、
ほとんど、利益の金額と現預金の金額が一致します。
内部留保課税した場合税金が払えるのか
結論で言うと出来ないと言わざるを得ないです。
貸借対照表の右側は主にどのようにして資産を集めたかを指すものです。
例えば、借入金、資本金、利益の3つが中小企業の主な例です。
一方、貸借対照表の左側は何を資産として持っているかを表すものです。
現金商売であれば、現預金が多く占める事になります。
ところが業種によっては、高額な土地や設備投資をして初めて事業を行える事もあり得ます。
その場合、どんなに高額な土地や設備投資でも、いくら内部留保と言う形だけの儲けに対しても、
すぐに換金する事はできません。
なぜならこのような土地、設備投資を基に事業を継続する事が目的であって、
これらの設備投資を売却する事は前提に無いからです。
内部留保課税をした場合の問題点
内部留保課税をした場合の問題点は明らかです。
比較的好調な企業でさえも設備投資を控える事になるでしょう。
もっと言ってしまうと人件費を減らす事にもつながる可能性があります。
景気が悪くなった場合の問題点
日本の比較的業績が好調な会社が内部留保を蓄えて置くことには理由があります。
リーマンショックや東日本大震災などが発生すると連鎖的に好業績の会社も景気が悪くなります。
まさかに備えて内部留保を厚くしておくことは企業経営でも当然の事だと考えられます。
なぜなら、国や労働組合などは景気が急速に悪化しても助けてくれないからです。
まとめ
選挙に当たって内部留保課税が問題になっております。
会計を知らない方にとっては大儲けしている企業から税金を多く取る事は選挙対策としては有効だと思いますが、
現実問題は無理な事を押し付けようとしているに過ぎません。
個人事業で貸付金がある場合の会計処理について外部への貸付金と事業主本人に対する貸付金とに区分して分かりやすく解説します。
外部や従業員への貸付金
個人事業で外部や従業員への貸付金について考えてみたいと思います。
どのような勘定科目を使うかは結論から言いますと貸付金を使います。
貸付金として表示する場合にも借入金と同様に短期と長期に区分する必要はありません。
詳しくは先日の記事をご参照ください。
個人事業の借入金の表示
実務上はなかなか外部の第三者への貸付金は少ないものです。
事業で貸付金が発生するということは一般にお金に余裕がないと出来る事ではありません。
そのため、外部の第三者への貸付金はあまり見ません。
多いのは、従業員が入社して間もなくお金に困っているケースで仕事に支障がないようにと前払いをしている個人事業主は多くいらっしゃいます。
事業主本人への貸付金
事業主の従業員に給料の前払いや一時的な資金の悪化を防ぐために事業主が従業員に貸付金を行う事は頻繁にあると記載しました。
事業主本人が事業主本人に貸す場合にはいかがでしょうか?
借入金の場合と同じく事業主勘定を使うことになります。
事業主本人が事業主本人にお金を貸したとしても貸し手と借り手が同じなので貸付金を返す必要はありません。
そのため事業主貸勘定を使います。
事業主貸を使う理由
事業主本人が事業主本人にお金を貸したとしても貸し手と借り手が同じなので事業主貸勘定で表示すると記載しました。
また、この事業主貸勘定は年をまたいで経理処理を行うと元入金で処理します。
事業主貸勘定の元入金の会計処理は貸したお金が返って来ないのですから、利益の蓄積である元入金から差し引きます。
事業主貸勘定として会計処理する具体例は、事業主本人の生活費の支払い、生活費ではないが事業とは関連のない支払いが当てはまります。
自宅の家賃、水道光熱費、国民健康保険、所得税などの税金なども同じような例です。
まとめ
個人事業で第三者や従業員にお金を貸した場合は貸付金として短期と長期に分ける事無く貸付金として表示します。
従業員への貸付金は実務上頻繁に発生するものです。
事業主本人が事業主本人にお金を貸しつけた場合は借入金と同じく返す必要がありませんので事業主貸勘定を使用します。
事業主貸勘定は年をまたいで経理処理を行うと元入金振り替えとなります。
貸したお金が返って来ないので利益の蓄積である元入金を差し引く経理処理となります。
個人に借入金があるときは借入金として短期と長期に分けずに表示しますが、事業主本人からの借入の場合の表示について分かりやすく解説します。
個人が金融機関から借り入れがある場合
個人が金融機関から借り入れを行っている時には、法人と異なり短期と長期に区分する事なく借入金として表示する事を記事にしました。
個人事業の借入金の表示
個人事業の借入金については、決算書を第三者に見せる機会が少なくまた経理にもそれ程力を入れる事が難しい面も配慮されて法人よりもゆるやかな経理処理が認められております。
事業主からの借り入れの場合
事業主本人から借り入れがある場合は、事業主借で処理しましょう。
プライベートのお金と事業用のお金をきっちりと分けている方も中にはいらっしゃいますが、現実は中々難しいものがあります。
例えば事業用の通帳に入金された受取利息が当てはまります。
受取利息は法人では収入に計上しなければなりませんが、個人事業の場合は事業の収入には計上しません。
個人事業は事業本来から得たものしか収入には計上しないのです。
つまり、どんなにきっちりと事業の経理をしていても事業主借勘定は発生しますので、事業主本人から借り入れた金額については、事業主借勘定で処理する事がもっとも手間がかかりません。
慣れるまでは時間が掛かるかも知れませんが、事業の経理で入金があったもののうち全てが事業のみから得たもの以外は事業主借勘定で処理しましょう。
事業主借で処理する理由
事業の経理で事業主本人からの借入金や全てが事業から得たもの以外は事業主借勘定で統一して処理しましょうと記事にしました。
その理由はとても簡単です。
事業主本人が事業主本人に貸したお金は返す必要がありますでしょうか?
また、返す必要がある場合に利息を支払ったりしますか?
事業主本人がお金の貸し手と借り手の両方を兼ねる場合は借入金の存在自体がありませんね。
そのため、事業主借は年をまたぐと元入金に振り替わります。
個人事業主の経理で年をまたぐ際の処理はなかなか難しいものがありますので詳細は別の記事で記載します。
まとめ
個人事業主からの借入についてはどんなにきっちりと経理を行っても事業主借勘定が発生するものだと説明しました。
金融機関からの借入の場合は短期と長期を区分する事なく借入金で処理しましょう。
事業主本人からの借入金については、年をまたいで経理処理を行うと元入金に振り替えられると説明しました。
元入金に振り替える理由は事業主から借りたお金は事業主に返さなくて良いからです。
個人事業者が金融機関から借り入れを行った場合の借入金の表示について法人と比較しながら分かりやすく解説します。
法人の場合のまとめ
法人で借入金があるときは、おおまかに言って決算期の翌期に返済しなければならない借入金については短期借入金と長期借入金に区分して決算書に表示しなければならないと記事にしました。
決算書での借入金の表示
法人が借入金の区分を表示しなければならない理由は会計の基準で定められているからです。
法人は利益を求める組織ですので、数値を厳密に管理する必要があります。これは損益を中心に考えた場合です。
借入金は資金繰りにも大きく影響します。そのため資金繰りの面からも細かく管理把握する必要があります。株主がいる事も影響しております。
個人事業の場合は区分しなくてよい
個人事業の場合は区分する必要はありません。区分しなくて良い理由については次の項目で書いていきます。
個人事業が区分しなくてよい理由
個人事業の場合、借入金があっても短期借入金と長期借入金に区分する必要はないと書きました。
その理由についてはまず箇条書きにしたいと思います。
- 法人と違い個人事業には株主がいない
- 法人は原則として決算公告をしなければいけないが個人はしなくて良い
- 個人事業は少人数で行っている事が前提のため経理に力を入れられない
- 個人事業では決算書が指定されている
- 個人事業は税金をしっかり払い、借入金を返済すれば良い
1.についてですが、法人は株主がいます。
株主は会社で一番立場が上になります。
経済上では会社に対して配当を請求する権利があります。
2.についてですが、株式会社は会社法が施行された現在でも官報などに決算公告をしなければなりません。
最低限でも貸借対照表(バランスシート)は公告しなければいけません。
そのため短期借入金と長期借入金に区分する必要があります。
3.についてですが、個人事業ではガチガチに経理をする事が現実的には難しいです。
最低限度の経理をしておけば良いでしょうと税務署側でも認識しております。
このような法人と個人で異なる規定はありますのでまた別の機会に記事にします。
4.についてですが、法人は決算書のフォーマットが自由です。
個人事業の場合は収支内訳書や青色申告決算書などのようにフォーマットが指定されております。
余白に新たな科目を使用して計上する事も出来ますが、手間もかかります。
5.についてですが、個人事業の場合は他者に決算書を見せる機会が少ないと言う意味になります。
まとめ
借入金がある場合の決算書の区分について記事にしました。
法人では翌期に返済しなければならない借入金とそれ以外の借入金を区分して決算書に表示しなければいけません。
個人については他者に決算書を見せる機会も少ない事や経理の手間を考慮して簡略した決算書が認められているため借入金を短期と長期に区分する必要はありません。
決算書とは税務署、金融機関、取引先などの第三者に提出する書類になります。ある程度誰が見ても分かるように決算書には表示のルールが設けられております。本日は借入金がある場合の理想的な決算書の表示について分かりやすく解説します。
借入金と一年基準
借入金に限らずですが、誰もが見る可能性のある決算書は表示についてルールが設けられております。
そのルールの一つに「一年基準」というものがあります。
一年基準とはその名の通り一年を基準として区分して決算書に表示する事を言います。
いつから一年かはご存知だと思いますが、決算締め日(通常は末日)から一年ですので、一年決算法人であれば、翌期に支払わなければいけないものを表示します。
借入金の場合は通常、返済期間が5年以上になる事が多いため、決算手続きでは翌期に返済しなければならない借入金と翌々期以降に返済する借入金とに区分します。
翌期に返済する借入金は短期借入金(一年以内返済短期借入金)として翌々期以降に返済する借入金は長期借入金として表示します。
借入金と管理
決算手続きで借入金は短期借入金と長期借入金に区分する必要があると説明しました。
会社の中には借入金が何本もある会社もあります。
その場合の管理は例えば〇〇銀行2017年9月借入などと名前を付けて借入金をより詳細に分ける口座別管理(こうざべつかんり)を行う事をお勧めします。
〇〇銀行借入金1000万円などの表示はお勧めしません。
何年後かにまた同じ銀行で借入をする場合に混乱する可能性があるからです。
いつどこの金融機関で借入したかさえ分かれば、後は借入金の返済明細書を手許に置いて確認すれば良いのです。
こうすれば借入金単位ごとに残高の管理を毎月行う事ができます。
中には借入金が10本もあるのに借入金単位で管理せずに決算でまとめて処理されている会社もありますが、決算でまとめて行っても時間は掛かるし、経営に役立っているとは考えられません。
借入金と個人借入金
経営が順調で資金も豊富であれば特に社長様からの借入金が発生する事はありませんが、多くの会社では一時的にでも資金不足になる事があります。
その場合は社長様がポケットマネーで会社に貸し付ける事もあります。
決算日を前に返済出来れば良いのですが、決算日をむかえても借入金の残高があれば個人からの借入金ですので、金融機関などの借入金とは区分して表示しましょうというルールが決算書とは別の「法人事業概況説明書」に設けられております。
借入金の融資での影響
融資を既に受けられている金融機関には決算終わると決算書と申告書一式を確認のために提出を求められる事があります。
また、新たな融資の際にも決算書があるのであれば、決算書の提出は求められます。
金融機関にとってはもちろん利益や売り上げの規模、預金の残高、資本金なども気にされますが、他社の借入金がいくらあるのかも気にされます。
そのため、借入金の区分と残高は特にしっかりと管理しておきたいものです。
まとめ
借入金には決算日を基準に翌期に返済するものと、翌々期以降に返済するものとに区分して決算書に表示する必要があると記載しました。
また、借入金は個人から借りているものと金融機関などから借りているものとに区分する必要もあると書きました。
決算書は第三者が見てもある程度分かるようにしようというルールがあります。
このルールを守っていれば金融機関からの印象も良いのではないでしょうか?