相続税は、原則として納期限までに現金で一括納付しなければなりません。
しかし、相続財産の大半が不動産である場合など、現金での納付が難しいケースもあります。
そのような場合に利用できる制度が、「延納」と「物納」です。
本記事では、相続税の納付方法の種類や、延納・物納制度を利用する際のポイントについて解説します。
相続税の納付方法は3種類
相続税の納付方法には、次の3種類があります。
- 現金による一括納付
- 延納
- 物納
それぞれの特徴を確認していきましょう。
相続税は期限内の一括納付が原則
相続税は、他の税金と同様に、納期限までに現金で一括納付するのが原則です。
納付期限は申告期限と同じで、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内となります。
納付は、申告書を提出する税務署や金融機関で行います。
なお、相続税は被相続人の住所地を管轄する税務署へ申告するため、納税地が遠方になるケースもあります。
その場合、納付書を提出先の税務署から取り寄せるか、最寄りの税務署で作成してもらう必要があります。
延納は分割で納付する制度
延納とは、相続税を分割で支払う制度です。
相続財産の内容によっては、最長20年間にわたって分割納付することも可能です。
ただし、延納は誰でも利用できるわけではありません。
「一括納付が困難であること」が条件となるため、要件を満たさない場合は申請が認められません。
また、延納期間中は利子税が発生するため、一括納付よりも最終的な税負担は大きくなります。
物納は財産そのもので納付する制度
物納とは、現金ではなく不動産などの財産で相続税を納める制度です。
所得税や法人税では認められていませんが、相続税では一定条件のもと利用できます。
ただし、物納が認められるのは、現金納付も延納も困難である場合に限られます。
そのため、まずは現金納付や延納による対応を検討し、それでも支払いが難しい場合に物納を申請する流れになります。
延納制度を利用する際のポイント
延納を利用するためには、相続税の申告期限までに申請を行う必要があります。
原則として担保提供が必要
延納を利用する場合、原則として担保を提供しなければなりません。
担保として認められるのは、国債・社債・不動産など、価値が安定しており処分しやすい財産です。
一方で、売却が難しい財産や、処分制限のある財産などは担保として認められません。
また、必要担保額は、延納税額と利子税額をカバーできる金額以上である必要があります。
ただし、延納税額が100万円以下で、かつ延納期間が3年以下の場合には、担保提供が不要です。
延納が認められる納税額
延納制度を利用できるのは、相続税額が10万円を超える場合です。
さらに、「期限内に現金で納付することが困難である」と認められなければなりません。
そのため、十分な預貯金を相続しているケースでは、延納が認められない可能性があります。
延納期間は最長20年
延納期間は、相続財産に占める不動産等の割合によって異なります。
不動産等の割合が高いほど長期間の延納が可能であり、最大20年間の分割納付が認められるケースもあります。
一方、不動産等の割合が低い場合は、最長5年程度となります。
延納中は利子税が発生する
通常、納期限後に税金を納付すると延滞税が発生します。
しかし、正式に延納が認められている場合は、延滞税ではなく「利子税」を支払います。

※この表の「特例割合」は、令和7年1月1日現在の「延納特例基準割合」0.9パーセントで計算しています。
利子税は延滞税より低い水準ですが、分割払いである以上、追加負担が発生する点には注意が必要です。
物納制度を利用する際のポイント
物納は、現金納付や延納が困難な場合にのみ利用できる制度です。
そのため、利用条件は非常に厳しく設定されています。
物納財産には優先順位がある
物納できる財産には優先順位が定められており、税務署は処分しやすい財産を優先的に受け入れる傾向があります。
たとえば複数の不動産を所有している場合、立地条件が良い物件など、換価しやすい財産が優先されやすいです。
| 順位 | 財産の種類 |
|---|---|
| 第1順位 | ①不動産、船舶、国債証券、地方債証券、上場株式等 ②不動産及び上場株式のうち物納劣後財産に該当するもの |
| 第2順位 | ③非上場株式等 ④非上場株式のうち物納劣後財産に該当するもの |
| 第3順位 | ⑤動産 |
【出典】:物納できる財産の順位と財産の範囲が変わりました(国税庁)
そのため、必ずしも希望する財産を物納できるとは限りません。
物納申請は期限内に行う必要がある
物納制度を利用するには、相続税の申告期限までに申請しなければなりません。
期限までに申請できない場合、その時点で物納は認められなくなります。
また、物納申請には多数の添付書類が必要となるため、事前準備が非常に重要です。
申請前には、税務署の担当部署へ相談し、必要書類や適用条件を確認しておくことをおすすめします。
まとめ
相続税は現金による一括納付が原則ですが、一定の条件を満たせば「延納」や「物納」を利用することも可能です。
ただし、どちらの制度も利用要件が厳しく、申請したからといって必ず認められるわけではありません。
また、申請期限はいずれも相続税の申告期限までとなっているため、早めに準備を進める必要があります。
特に、相続財産に不動産が多いケースや、納税資金の確保が難しい場合は、事前に税理士へ相談し、税務署との協議を進めながら手続きを行うことが大切です。
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